ハッピーエンド

誰かを羨むとか憎むといった感情は遠い彼方に忘れてしまった。
今は自分が誰にも危害を加えられずに生きていく事で精一杯である。

大学には学科が存在するが高校に比べクラスという意識が薄い。サークルやゼミがクラスの代わりみたいなものである。

何のサークルにもゼミにも属していない慶介には今の状態が３年以上続いていた。もはや慣れっこである。

「なあ慶介、俺フリーだよな？」

「ああ、そうだよ」

鹿内が複数の女と交際している事は知っていたが、こう答えるより他は無い。

テーブルの下で鹿内の右手が女の腰に回されるのを慶介は生気の失せた目で見つめた。

やがて、あちらこちらでも似たような光景になり何時ものように慶介は一人取り残された。