クラス変えや進学で自分を苛めた奴が居なくなっても、必ずと言っていいほど、違う誰かがそれに代わった。

同級生の使い走りをさせられるのは日常で、度を越えた金銭の要求、格闘技の真似事の実験台、そしてそれらを拒めば更なる暴力が待っている。

親にも相談出来ず、先生は見て見ぬ振り、そんな毎日でも慶介には自殺する勇気もなかった。


大学生になってさすがに暴力をふるわれる事は無くなったが、それでも友人は皆、自分の事を蔑んだ目で見る。

そんな毎日を送っている慶介だからこそ、地下室に閉じ込められた中年男と若い女性、それに自分という奇妙なグループで無意識に主導権を握ろうともがいていた。

いま一言でも仲埜が慶介を恫喝すれば、瞬時に仮面がはがれ、野に下ってしまうだろう。