「ほらね?やっぱり此処は新宮ですよ。おじさん脅かさないで下さいよ。南極にでも連れてこられたのかと思っちゃったじゃないですか」

さっきドアロックの件で馬鹿にした仲埜の言葉に思わず息を飲んでしまったのが悔しくて、慶介は大げさに笑ってみせた。

いつも初対面の人と接する時は大げさに笑ったり、強がりをみせてしまう。

それは慶介自身が自然と身に付けた生きる為の智恵だった。

でもそれが生かされたことがあったかどうか・・・。

中学校に入学した時、高校に入った時、そして大学に入った時・・・

そればかりかクラス変えの度に慶介は新しい自分を見せようとした。

新しい環境で生まれ変わった自分をプロデュースする。