体の怪我は癒えた筈だ。

自分が治療したのだから間違いない。

傷跡も目立たないし新しい車も買い与えた。
しかし数多くの宝石や仲埜との時間も真喜子の心に出来た大きな穴を埋める事が出来ずにいる。

ふと目をあけた仲埜は信号待ちをしているタクシーが深夜営業しているフラワーショップの横にとまっていた事に気付いた。

「すいません、少し買いたいものがあるんで待っててください」

車を降りた仲埜は店に入りこんな時間に花を求める人が多いことに驚いた。

2人しか居ない店員が対応に追われている。客層には若い女性が多く、みな手に彩り豊かな花束を抱えていた。