しかし弘子は何一つ語ろうとせず、仲埜が聞いた事に最小限の言葉で返事をするだけの女だった。

真喜子は妻とは正反対の女だ。

証券会社で働く彼女は自立した女で、好き嫌いをはっきりと口にしたし、大きな目を輝かせてよく喋る明るい女だった。


真喜子といると仲埜は時間を忘れて夢中になる。しかも離婚をせまったりもしない。

初めて真喜子を抱いた時、いきなり上になり、絶頂に長く美しい黒髪を震わせながら歓喜の表情を浮かべるのを見て、仲埜は彼女が自分の女になるために生まれてきたのだと思った。

そんな真喜子が変わってしまった。

あの事件以来、心を閉ざしふさぎこんだように暗い表情が多くなる。仕事も休みがちになりマンションの一室で考え事をしている時間が目立つようになってきた。