それが仲埜にとっては嫌がらせとしか思えなかった。言いたい事があるなら言えばいいのだ。聞かれれば開き直って女と会っていたと即答してやるつもりなのに。
仲埜は黙って玄関を出た。連日続いた猛暑も夜になると僅かながら秋の気配が忍び寄ってくる。
通りに出てタクシーを拾った仲埜はシートに体を預けながらゆっくりと目を閉じた。
弘子が気付いてない筈がない。沈黙と従順によって自分を攻撃しているのだ。
結婚した頃は妻のそうした態度に好感を持った。
いつも控えめで夫を立てる・・・古い時代の良く出来た伴侶を得たと思ったのだ。
しかし月日が経つにつれ言いたい事を言わず、無言で仲埜の帰りを待つ弘子が煩わしくなってきた。もっと話をしたかった。相槌だけでなく妻の意見も聞きたかったし、自分の仕事中に妻が何をして何を感じたのか聞きたかった。
仲埜は黙って玄関を出た。連日続いた猛暑も夜になると僅かながら秋の気配が忍び寄ってくる。
通りに出てタクシーを拾った仲埜はシートに体を預けながらゆっくりと目を閉じた。
弘子が気付いてない筈がない。沈黙と従順によって自分を攻撃しているのだ。
結婚した頃は妻のそうした態度に好感を持った。
いつも控えめで夫を立てる・・・古い時代の良く出来た伴侶を得たと思ったのだ。
しかし月日が経つにつれ言いたい事を言わず、無言で仲埜の帰りを待つ弘子が煩わしくなってきた。もっと話をしたかった。相槌だけでなく妻の意見も聞きたかったし、自分の仕事中に妻が何をして何を感じたのか聞きたかった。


