「もう十分だよ。司も俺と同じ事を言うに決まってる。これ以上麻里ちゃんを苦しめたら司に怒られるよ」

無理に笑みを浮かべて麻里の手をとった。

日に焼けて皺の多い葛西の手に麻里の涙がこぼれ落ちる。

葛西はそれが麻里の血のような気がして強く手を握った。

「私・・・大丈夫です。平気です」

「駄目だ。君はあの男の前で服を脱ごうとした。君にそんな事をさせた俺を司が許すと思うかい?東君が止めてくれなかったら私は田中を撃つしかなかった・・・下の様子はモニターを使えば分かるから此処で待っているんだ」

穏やかに、でもはっきりとした口調で葛西は言った。麻里は黙って義理の父親になるはずだった男の顔を見つめる。この二人が親子になれる事はもう2度とない。