ハッピーエンド

亜衣と慶介は心此処にあらずといった表情で二人の会話を聞いていた。
耳には入っているが頭には入ってないかもしれない。

麻里は相変わらず無表情で仲埜を見ている。それは監視していると表現した方がいいような冷たく冷静な視線だった。

「よくそれが嘘だって見抜きましたね。それとも状況証拠を並べて彼を追い込み、ボロを出させる作戦?」

もはや一塊の物体と化した田中を横目で見ながら仲埜は言った。

「でも彼だったら追い詰めただけ開き直り直りそうですけどね」

「そうだろうね。私も最初は田中君の事は無視しようと思った。彼の証言が事件に与えた影響はそんなに大きくはない。彼は此処に来なくても良かったかもしれないんだ」