「彼は最初、警察には証言していない。事故がおきた時間に現場近辺の得意先を回っていたらしく、ニュースで事故を知った同僚が彼に事故を目撃したんじゃないか?って聞いたらしいんだ。それで田中君は、そう言われれば疾走する白い車を見た記憶がある・・・という事になって、田中君も最初は面倒がっていたのを銀行内で面白おかしく騒がれ『見たんなら些細な事でも警察に言うのが義務だ』となってしまったらしいんだ」

「そりゃあ確かに怪しいですね。周りに乗せられてつい・・・って感じなんじゃないですか?」

「私も最初はそう思った。彼が見たのは別の白い車だろう、場合によっては見たという事実さえ虚無かもしれない」

「調べたらやっぱり嘘だった?」

手を拭いてソファに座った仲埜は煙草をくわえた。

「吸ってもいいですよね?もう我慢出来ないですよ」