「彼は・・・田中君は直接事故を見てはいない。ただ事故直前に猛スピードで走り抜ける司の車を見たと警察に証言したんだ」

「だったら直接は関係なかったんじゃないですか?」

「そうかもしれない。でも私は息子がそんなスピードを出していたとは思えない。一度道路に飛び出した子犬をはねてしまった事があって、それからは慎重すぎるほど安全運転をしていた。何度か乗せてもらった事があったが私のほうがイライラするぐらいにね」

「なるほどね・・・それで何かおかしいと?」

ホームバーの蛇口で手についた血を洗い流しながら適当に相槌を打つ。

内心は最後に残る自分への尋問が気がかりだ。