悲鳴を上げて壁に打ち付けられた慶介が鼻を押さえて苦痛のうめきを発する。両手の隙間から鮮血が滴り落ちた。

亜衣は目を大きく見開いて必死に後ずさりする。


状況を静観していた仲埜も思わず立ち上がった。

「落ち着くんだ!仲間同士で喧嘩してどうする」

「誰が仲間だって?あんたみたいなオヤジと仲良くした覚えはないぞ!」

「私が・・・欲しいの?」

麻里の声が最初のように冷静な冷たい響きに戻っていた。葛西が驚いて横を向く。

「ああ、そうだ。そしたら協力してやるよ」

「どうすればいい?」