ハッピーエンド

「書類は用意してある。これを持って銀行にかけあいな。2億は借りられるだろう。それをあんたにくれてやるよ」

「そ、その分は返済して頂けるのでしょうか?」

「そのうちにな、新宮市御崎町○○番地、南海ハイツの田中俊和さん」

もはや検討の余地はなかった。ただただ一刻もはやくこの場から逃げたかった。
男達は自分の住所まで調べている。何もかも最初から仕組まれた罠だったのだ。

何処をどう歩いたのかさえ覚えていない。
フラフラと町をさまよった田中は無意識に銀行に帰り、男から手渡された書類を提出していた。

これで自分の人生は終わった。
暴力団への融資は表向きは商事会社だが実体の無い、そして担保の価値もない背任行為なのだ。