「桃子、そっちじゃないよ」



「‥‥‥‥‥‥‥」



「桃子‥‥‥?」



「‥‥‥‥っえ、あ、何?」





放課後の掃除時間。


ゴミ捨て当番のあたしと雅は、ゴミ箱を持って焼却炉まで向かう。



「どしたの?今日朝からずっと、ボーッとしてるけど‥‥」




心配そうにあたしの顔をのぞきこむ雅。



「あ‥‥ううん。なんでもないよ」



口ではそう言ってるけど‥‥心の中で本当は、朝の水樹の言葉が気になってて‥‥‥。



今日の授業も上の空だった気がする。





「ならいいけど‥‥‥。なんかあったらいつでも聞くから言いなよ?」



雅のアーモンド型の瞳が、少しだけ垂れ下がる。



まだ自分でもなんなのか、よくわからないし‥‥変に雅に心配かけちゃってもダメだよね‥‥。



そう思ったあたしは、朝のことは言わないでおくことにした。


「うん、ありがと!」




いつもどおり笑顔でお礼を言うと、「桃子はやっぱり笑顔が一番!」と言って微笑んでくれた雅。



あたし、雅と友達になれて良かったって、改めて思った。