「俺はお前一人だけだと言っているだろ。」
らしくない柔らかな笑みを浮かべれば、エレナは瞳を大きく開き、次の瞬間には目を細めて涙で潤む。
長い睫毛が涙で濡れ、小さく震える体。
「分かったのなら戻って来い。」
ベンチに座るエレナの前で膝をついたまま手を差し伸べれば…
「シルバ……っ…」
エレナはその手を取らずに、俺の胸に飛び込んできた。
一瞬驚いたものの、俺の首に腕を回し肩口でしゃくり上げるエレナの体を包み込んだ。
ずっと外にいたエレナの体はやはり冷えており、背中は冷たかった。
しかし、怒る気にもなれないのはやっと腕の中に戻ってきた存在を離したくないと思うからこそ。
たった一日触れなかったくらいで…と思うが、今は怒るよりもエレナを近くに感じていたい。
加減のきかない力で抱きしめていれば、少し落ち着いたエレナが小さく呟いた。
「ごめんなさい………」
何に対して謝っているのかは明白だった。
エレナも不安だったのだ。
だからこそジュゼットを利用して自覚させようとした。
荒業だったが効いたようだな。
いや…このくらい強引に運ばなければエレナは自分の気持ちを押し込めただろう。
エレナはそういう女だ。
とことん振り回されている自分が可笑しく、フッと笑みを浮かべながら首に腕を回しているエレナを抱えて立ち上がる。

