白銀の女神 紅の王Ⅱ




「だから……」

「だからエストの姫に妃の座を譲ると?」


エレナの言葉にかぶせてそう聞けば、弱々しくコクンと頷く。



事は思い通りに運ばないものだな。

この賭けは俺の負けだ。


そう思って口を開きかけた時だった。

エレナが小さく「けど…」と口にする。



「やっぱり…だめ……ひっく…ふっ…」


両手で顔を覆い隠し、途切れ途切れに言葉を紡ぎだすエレナ。

涙を流しながらも紡ぎだされた言葉に、目を丸くして驚く。



まさか……

ドクンッといつになく心臓が音を立てるのを聞く。

顔を隠し、俺の様子に気づかないエレナは震える声で続ける。




「貴方とジュゼット様が寄り添うと胸が締め付けられて…苦しくて……」


本当に苦しそうに、息を詰めながら吐き出されるエレナの心の内。

顔を覆う手が握りしめられているのは、この告白にどれだけの決意が必要だったかが垣間見られる。





「傍にいてもいいって言ってくれたけど…わたし……もうそれだけじゃダメなのっ……ひっく……ふ…」



エレナにしては上出来だ。

しかし――――――


「お前はどうしたい、エレナ。」


その問いに、顔を覆ったままピクリと反応するエレナ。

決定的な言葉が聞きたくて、つい口に出た。



いつからこんなにも欲を持つようになったのか。

自分の中に存在した感情に驚きつつも、エレナの反応を待つ。