「だから……」
「だからエストの姫に妃の座を譲ると?」
エレナの言葉にかぶせてそう聞けば、弱々しくコクンと頷く。
事は思い通りに運ばないものだな。
この賭けは俺の負けだ。
そう思って口を開きかけた時だった。
エレナが小さく「けど…」と口にする。
「やっぱり…だめ……ひっく…ふっ…」
両手で顔を覆い隠し、途切れ途切れに言葉を紡ぎだすエレナ。
涙を流しながらも紡ぎだされた言葉に、目を丸くして驚く。
まさか……
ドクンッといつになく心臓が音を立てるのを聞く。
顔を隠し、俺の様子に気づかないエレナは震える声で続ける。
「貴方とジュゼット様が寄り添うと胸が締め付けられて…苦しくて……」
本当に苦しそうに、息を詰めながら吐き出されるエレナの心の内。
顔を覆う手が握りしめられているのは、この告白にどれだけの決意が必要だったかが垣間見られる。
「傍にいてもいいって言ってくれたけど…わたし……もうそれだけじゃダメなのっ……ひっく……ふ…」
エレナにしては上出来だ。
しかし――――――
「お前はどうしたい、エレナ。」
その問いに、顔を覆ったままピクリと反応するエレナ。
決定的な言葉が聞きたくて、つい口に出た。
いつからこんなにも欲を持つようになったのか。
自分の中に存在した感情に驚きつつも、エレナの反応を待つ。

