来た道を戻っていると、見た顔が向こうから走ってくる。
確かあれは……
「シルバ様!」
俺を見つけるなり、ほっとした表情をするその者。
息を上げて走ってきたのはエレナの護衛につけていた者の一人だった。
「エレナが後宮にいないのだが。」
「はい、私も今ご報告に上がろうかと思っていたところです。」
パーティーが終わってから、あの人ごみに紛れて出てきたから引き留められなかったのだろう。
「どこにいるんだ?」
「中庭にいらっしゃいます。護衛はつけておりますのでご心配なく。」
エレナがいるであろう場所を聞き、眉をしかめる。
「どれくらいになる……」
「は?」
低い声で一言そう呟けば、護衛の間抜けな声が返ってきた。
「エレナが中庭に出てどれくらい経ったか聞いているんだ。」
この護衛に苛立ちを感じているわけではないが、エレナの今の状態を思うと自然と声が低くなる。
この季節、まだ過ごしやすい気候と言えど夜は肌寒い。
しかも今日は背中の開いたドレスを着ていた。
ホールから出て行った後そのまま中庭に向かったとすれば小一時間外にいることになる。
まさか…とは思いつつも護衛の返事を待てば、少し考えたそぶりを見せて「確か…」と口を開く。
「1時間ほど中庭から動いていませんが…」
「分かった。」
内心舌打ちをしながらも、その答えを聞いてすぐに中庭に向かった。

