その中でも一際目を引く馬車が王城のエントランス前でピタリと止まる。
馬車の扉が開き、中から出てきたのは見事な赤髪を背中になびかせた女性。
遠目からでも分かるその人は、エスト王国のお姫様だった。
名前は確か…ジュゼット姫。
エスト王国の一人娘で、とても大切に育てられたそうだ。
妃として嫁ぐために、あらゆる稽古や習い事を受けているというジュゼット姫は端から見ても自信に満ち溢れていた。
優雅に歩いていく先にはシルバの姿。
ジュゼット姫が近づくと、シルバは口元に笑みを浮かべて手を差し出す。
「ッ………!」
途端にズキッと胸が嫌な音を立てて軋む。
ショックだった……
シルバが何のためらいもなく手を差し出しエスコートしていることが。
ジュゼット姫に笑いかけていることが…
「っ……私も準備しなきゃ……」
ズキズキする胸の痛みを無理やり抑え込め、窓の傍を離れる。
今日の夜のパーティーには私も出席しろと言われているから…
シルバの命には逆らえない。
トボトボと歩きながら、ニーナが用意してくれたドレスに着替え始めた。

