白銀の女神 紅の王Ⅱ




完全に出ていくタイミングを見失っていた時。



キャンッ!


足元に座っていたニコが一声鳴く。

きっとじっとしていられなかったのだろう。

尻尾を振りながら「遊んで」と訴える。





「ニコ、そっちに行ってはダメよ。」


炊事場に向かって走っていくニコを追いかけて一歩踏み出せば、中にいた侍女と目が合う。




「エ、エレナ様ッ!!」

「ど、どうしたんですか?」


突然現れた私に慌てふためく侍女たち。




「あの…これを返しに…」


トレイを少し持ち上げ力なく笑う。

まさか私が返しに来ると思わなかった侍女は、慌ててこちらへ寄ってくる。



「それは申し訳ございませんでした。ニーナは何をしているのかしら。」

「ニーナはお洗濯ものを取り込みに行ったの。」


ほら、雨が降り出したでしょう?と外を見ながらそう言えば、「そうでしたか」と答える侍女。

そして、私が持っていたトレイを受け取りながら、罰の悪そうな顔をして口を開く。




「えっと…あの…エレナ様はいつからそこに?」


一瞬ドキリと心臓が嫌な音を立てる。




しかし――――――


「…今来たところです。どうか…しましたか?」

「っいいえ!なんでもございませんわ。わざわざ持ってきてくださりありがとうございました。」


笑顔で答えた私に、あからさまに安堵しながらそう言う侍女。

「いいえ…」と一言残してその場から立ち去った。

胸に抱えた不安とともに――――