完全に出ていくタイミングを見失っていた時。
キャンッ!
足元に座っていたニコが一声鳴く。
きっとじっとしていられなかったのだろう。
尻尾を振りながら「遊んで」と訴える。
「ニコ、そっちに行ってはダメよ。」
炊事場に向かって走っていくニコを追いかけて一歩踏み出せば、中にいた侍女と目が合う。
「エ、エレナ様ッ!!」
「ど、どうしたんですか?」
突然現れた私に慌てふためく侍女たち。
「あの…これを返しに…」
トレイを少し持ち上げ力なく笑う。
まさか私が返しに来ると思わなかった侍女は、慌ててこちらへ寄ってくる。
「それは申し訳ございませんでした。ニーナは何をしているのかしら。」
「ニーナはお洗濯ものを取り込みに行ったの。」
ほら、雨が降り出したでしょう?と外を見ながらそう言えば、「そうでしたか」と答える侍女。
そして、私が持っていたトレイを受け取りながら、罰の悪そうな顔をして口を開く。
「えっと…あの…エレナ様はいつからそこに?」
一瞬ドキリと心臓が嫌な音を立てる。
しかし――――――
「…今来たところです。どうか…しましたか?」
「っいいえ!なんでもございませんわ。わざわざ持ってきてくださりありがとうございました。」
笑顔で答えた私に、あからさまに安堵しながらそう言う侍女。
「いいえ…」と一言残してその場から立ち去った。
胸に抱えた不安とともに――――

