「アークが権力を振るい始めたからって、今のうちに取り入っておこうって魂胆でしょう?」
噂に反応した別の侍女が冷静に答える。
ベテランの侍女なのだろう、ゴシップ話を聞いても声色一つ変えない。
しかし、噂話を持ちかけた侍女は興奮気味に口を開く。
「それもあるけど、エスト王国のお姫様がシルバ様に熱を入れてるって話よ。」
持っていたトレイを落とすかと思った。
エスト王国のお姫様が…シルバを……
真っ白になった頭でただ呆然と立ち尽くす。
いきなり足を止めたまま動かなくなった私の足元でニコがちょこんと座り、どうしたの?と見上げてくる。
けれど私の意識は開けっ放しの扉の向こうにあった。
「でも何故いきなりそんな話が?」
「それが、いきなりでもないの。」
聞き返してくれたのが嬉しかったのか、興奮気味に話す侍女は自分の持っている情報を話し始めた。
「エストのお姫様はずっと前にシルバ様に会っていて。その時一目ぼれしてたらしいの。けど、シルバ様は後宮に誰もいれなかったでしょう?」
コクンと頷いたであろうもう一人の侍女。
後宮に入ったのは私が初めてだと聞いていた……

