「腕…手当しましょう?」


大人しく腕の中にいるエレナがそう言うが…




「必要ない。」


もぞもぞと動くエレナを抱えて立ち上がる。




「きゃっ……」

「キャンッ!」


突然身体を抱えあげられた事に驚くエレナの声と子犬の鳴き声が重なる。

届かない位置に主人を持って行かれた子犬は不機嫌そうだ。

しかし、かまわずにテントの奥の方へ歩いて行く。

天幕をくぐった先にあるベッド。

ベッドと言っても、クッションの様な柔らかいマットを敷いているだけなのだが…

他のテントと比べればまだましなものだった。




ストン…――――

そこにエレナを横にすれば、子犬もベッドに飛び込んだ。




「ふかふかっ…」


ベッドに顔を埋め、気持ちよさそうにそう言うエレナ。

どうやら気に入ったようだ。




「先に寝ていろ。俺はまだウィルに用がある。」



そう言えば―――


「一人で……?」

眉を寄せ、こちらを見上げるエレナ。




これだからコイツは……