「名前まで考えていたのか。」
ニコと呼ばれた子犬は嬉しそうだ。
「まるで俺が許すのが分かっていたみたいだな。」
低い声でそう言えば、エレナが焦ったように否定する。
「いいえ、ニコはこの子を見た時から思い浮かんでいた名前で…」
眉を顰めている俺を罰の悪そうな顔で見上げるエレナ。
大方俺の気に障ったのだとでも思っているのだろう。
「けど…シルバはニコを連れて行く事を許してくれると思っていました。」
「………?」
何を根拠に……
そう思っていれば…
「だってシルバは優しいから。」
「ッ……!」
ふわりと柔らかい笑みを見せたエレナに息を飲む。
嬉しそうにほころばせる口元。
うっすら赤く色づく頬。
時折見せるこの笑顔は、いつも不意打ちだ。
ドクン……――――
大きく跳ねる心音。
無意識に手が伸びた先はエレナの艶やかな銀色の髪。
サラサラと手になじむ髪はもう渇いていた。
その髪に指を絡ませ、細い首を引き寄せる。

