白銀の女神 紅の王Ⅱ




「名前まで考えていたのか。」


ニコと呼ばれた子犬は嬉しそうだ。



「まるで俺が許すのが分かっていたみたいだな。」


低い声でそう言えば、エレナが焦ったように否定する。





「いいえ、ニコはこの子を見た時から思い浮かんでいた名前で…」


眉を顰めている俺を罰の悪そうな顔で見上げるエレナ。

大方俺の気に障ったのだとでも思っているのだろう。




「けど…シルバはニコを連れて行く事を許してくれると思っていました。」

「………?」


何を根拠に……

そう思っていれば…




「だってシルバは優しいから。」

「ッ……!」


ふわりと柔らかい笑みを見せたエレナに息を飲む。

嬉しそうにほころばせる口元。

うっすら赤く色づく頬。

時折見せるこの笑顔は、いつも不意打ちだ。



ドクン……――――


大きく跳ねる心音。

無意識に手が伸びた先はエレナの艶やかな銀色の髪。

サラサラと手になじむ髪はもう渇いていた。

その髪に指を絡ませ、細い首を引き寄せる。