俺がエレナの髪を拭き、エレナが子犬の髪を拭く。
何とも変な図だった。
「はい、拭き終わったわよ。」
「キャンッ!」
エレナの声に尻尾をちぎれんばかりに振り、喜ぶ子犬。
元はと言えば、エレナが湖で溺れかけたのはこの子犬が原因。
その子犬を可愛がるのを見ているのは当然面白くないわけで…
自分の心の狭さに呆れた。
「動くな、まだ終わっていない。」
子犬と戯れるエレナの肩を掴み、大人しくさせる。
ささやかな抵抗だった。
「ごめんなさい。」
そんな俺の思惑など知らないエレナはしゅん…としおれる。
頭を垂れて俯けば、露わになる白い首。
透き通るような白い肌が誘う。
小さな肩ごと後ろから抱きしめたい衝動にかられるが…
「シルバ?」
手の止まった事にエレナから訝しげな声が上がる。
「なんでもない。前を向いていろ。」
エレナの呼び声に我に返り、再び手を動かす。

