白銀の女神 紅の王Ⅱ




俺がエレナの髪を拭き、エレナが子犬の髪を拭く。

何とも変な図だった。




「はい、拭き終わったわよ。」

「キャンッ!」


エレナの声に尻尾をちぎれんばかりに振り、喜ぶ子犬。

元はと言えば、エレナが湖で溺れかけたのはこの子犬が原因。

その子犬を可愛がるのを見ているのは当然面白くないわけで…

自分の心の狭さに呆れた。




「動くな、まだ終わっていない。」


子犬と戯れるエレナの肩を掴み、大人しくさせる。

ささやかな抵抗だった。



「ごめんなさい。」


そんな俺の思惑など知らないエレナはしゅん…としおれる。

頭を垂れて俯けば、露わになる白い首。

透き通るような白い肌が誘う。

小さな肩ごと後ろから抱きしめたい衝動にかられるが…




「シルバ?」


手の止まった事にエレナから訝しげな声が上がる。



「なんでもない。前を向いていろ。」


エレナの呼び声に我に返り、再び手を動かす。