「そもそもお前は泳げないだろ。泳げもしない癖にむやみに水に入るな!」
その一言で、エレナの銀色の瞳がじわじわと潤む。
涙を溜めたその瞳は、まるで輝くダイヤの様。
「ごめんなさい……」
力なく呟きながら、必死で涙を耐えるエレナ。
口元をキュッと結び、瞬きもせずに今にも涙が零れ落ちそうな瞳でこちらを見上げる。
途端、苛立ちがフッと消えた。
怒っているわけではない……
身を案じての言葉だった。
そう言ったって、信じてもらえないだろう。
ッ…クソッ………
言葉にできないもどかしさに内心悪態をつく。
そして、言葉にできない代わりに身体が動く。
グイッ―――――
エレナの腕を取り、引き寄せる。
逆らうことなく倒れ込んできた身体を力の限り抱きしめれば、先程の不安が少し消えた。
「無事で良かった。」
耳元でそう言うと、腕の中のエレナがハッと息を飲んで俺の顔を見上げ…
瞳いっぱいに溜まっていた涙が堰を切ったように零れ落ちた。
「お前は本当に目が離せない奴だ。」
次々零れ落ちる涙を拭えども、エレナの涙は益々酷くなるばかり。
けれど、涙を流しながらも抱きついて来たエレナ。
確かに腕の中にある存在に、やっと自分の心も穏やかになった瞬間だった。

