「っは……シル……ッ」
バシャバシャッ――――
もがいては息継ぎをして水面上に上がるエレナ。
「チッ……」
悪態を吐き、走りながら身に纏う装飾を脱ぎ捨てて行く。
バサッというマントの音と剣を投げ捨てた時の金属の音を後にして、湖に脚を踏み入れた。
思ったよりも水温が低い。
それにすら苛立つと言うのに、近くて遠い場所でエレナがもがくのを焦る気持ちに押されつつ泳いでいく。
段々もがく力も弱くなり、沈んで行くエレナ。
這い上がる事も出来なくなりそうになった時…
ガッ……―――――
「ごほっ…げほっ…シル…バ……」
エレナの腰に手を回し、寸でのところで水面下から引き上げた。
間にあったか……
エレナが水を吐くのを確認し、張り詰めていた緊張が解ける。
そして、エレナを片腕で抱え、もう一方の腕を溺れていた子犬に手を伸ばす。
ブルブルッ…―――
こちらも水から引き上げるや否や、水を振り払う。
「良かった………」
子犬の無事を確認してポツリと力なく呟くエレナ。
衣服を身にまとった状態での泳ぎに、相当体力を奪われたのだろう。

