犬……?
視線の先には、水を必死になってかいている子犬がいた。
まだ泳ぎも覚えていないのだろう、溺れかけている。
その子犬に向かって行くエレナ。
「エレナッ!」
もう胸の下まで水につかる背に向かって叫ぶ。
すると…――――
「シルバっ……子犬が樹から落ちて…」
エレナがこちらに気がつき、振り返る。
この状況を説明しようとするが、溺れる子犬が気になる様子。
オロオロと俺と子犬を交互に見るエレナ。
「戻ってこい、俺が行く。」
エレナに向かって叫ぶ。
あの先は確か……
頭をかすめた記憶に一抹の不安を覚え叫んだのだが…
「大丈夫です!この湖浅いみたいなの。」
そう言って、溺れる子犬の方へ向かうエレナ。
「ッ…待て!エレナッ!」
焦りが声の大きさとなって表れた時、恐れていた事態が現実となる。
「きゃッ…!」
バシャンッ――――
一層大きい水音が聞こえた後、小さな悲鳴と共にエレナの姿が消えた。

