白銀の女神 紅の王Ⅱ




犬……?


視線の先には、水を必死になってかいている子犬がいた。

まだ泳ぎも覚えていないのだろう、溺れかけている。

その子犬に向かって行くエレナ。




「エレナッ!」


もう胸の下まで水につかる背に向かって叫ぶ。




すると…――――


「シルバっ……子犬が樹から落ちて…」


エレナがこちらに気がつき、振り返る。

この状況を説明しようとするが、溺れる子犬が気になる様子。

オロオロと俺と子犬を交互に見るエレナ。





「戻ってこい、俺が行く。」


エレナに向かって叫ぶ。




あの先は確か……

頭をかすめた記憶に一抹の不安を覚え叫んだのだが…



「大丈夫です!この湖浅いみたいなの。」


そう言って、溺れる子犬の方へ向かうエレナ。




「ッ…待て!エレナッ!」


焦りが声の大きさとなって表れた時、恐れていた事態が現実となる。



「きゃッ…!」


バシャンッ――――

一層大きい水音が聞こえた後、小さな悲鳴と共にエレナの姿が消えた。