白銀の女神 紅の王Ⅱ




「どうぞ」


ニーナだと思いクスクスと笑いながら声をかけると、扉が開く。

入ってきたのは予想とは違う人物だった。





「あなたは……」


後宮に入ってきたのは数人の侍女と護衛。

そして、その者たちに囲まれて入ってきたのはまだ若いアーク兵だった。

そのアーク兵は膝を折り、頭を俯かせて跪く。





「エレナ様、お疲れのところ突然の訪問をお許しください。しかも後宮にまで足を踏み入れてしまい…」


アーク兵は跪いたまま非礼を述べる。

本来ならば後宮はシルバ以外の男は入れないことになっている。

ただし侍女と護衛付であれば数分間の謁見は許されていた。

けれどそれもシルバが嫌がるから今まではなかった。





「あの…シルバなら執務室にいるとおもいますけど…」


てっきりシルバを探し求めてここに来たのだと思ってそう言ったが、男は首を横に振って応える。





「いいえ、本日はエレナ様に御用がありまして謁見のお時間をいただきました」

「私に?」



驚いたことにアーク兵は私に会いに来たと言う。

後宮に兵士が訪れるときは決まってシルバを訪ねてくる者ばかりなのに。




「どうしたんですか?」

「あ、あの…ギルティスではお助けできず申し訳ございませんでした。私の不手際で陛下からの預かり物をお渡しできませんでしたし、お咎めは受ける所存です」


跪いたままそう言った男にハっとする。

この部屋に入って来た時からどこか見たことのあるような顔だと思っていたら、男はギルティス兵に成りすまして潜入していたアーク兵だった。



無事に戻っていたのだ。