覚えていないだけに下手に言い訳をすることもできずにいると、シルバがクイっと私の顎を持ち上げる。
何の前触れもなくぶつかった視線を逸らそうとするが、それを許さないシルバ。
私の顎を支えた手が意味ありげな線をなぞって首をつたう。
「痛いだけではなかったはずだ」
指の動きと耳の奥に響く声にゾクゾクと悦びにも似た何かが体を駆け巡る。
体が口ほどにものを言うとはまさにこのことで、何も覚えていないくせにシルバの声に反応するのは体が覚えているということだろうか。
けど覚えていないものは覚えていない。
「お、覚えていません」
プイッと顔を逸らし強引にシルバの手を逃れると、シルバから諦めたような溜息が零れる。
耳の後ろから差し入れられたシルバの手は滑るようにして私の髪を梳く。
「強情だな。昨夜はあんなに可愛く俺を誘ったくせに」
「っ…そんなことない!もう…シルバの馬鹿っ…」
いつものように軽くシルバの胸を叩いたつもりだった。
いつもなら私の抵抗なんて全然効かなくて、シルバはただ笑って胸をポカポカと叩く私を見ているだけなのに…
「ッ……」
今日のシルバは少し声を上げて、表情を歪ませた。
「ごめんなさい」
痛がる素振りを見せたシルバに咄嗟に謝る。
そして、シルバが手で押さえた場所を見てハッとした。

