そして、額に柔らかな唇が触れた。
続けて眉間、両瞼と口づけが落とされ、残りは唇に口づければ終わりと言う時、ふとエレナが距離を取る。
どうしたのだろうかと思いつつ顔を覗けば、何か言いたそうにもごもごとしている。
「どうした?」
まさかここまでして心変わりをしたとは言わないだろう。
促すように優しくそう言えばエレナはギュッと瞬間的に目を瞑って、決心がついたのかすぐにパッと目を開く。
「あの…シルバは知らないと思うけど、私もデュークさんに伝言を託したの」
何を言い出すかと思えば、突然そんなことを話し始めるエレナ。
「貴方の代わりにデュークさんがギルティスに来た時、もう貴方には会えないんだと。もう貴方の心には私はいないんだと思っていたから」
切なく眉を潜めるエレナに胸が痛んだ。
「デュークには何と?」
「私は貴方を愛していました…と」
眉尻を下げて笑ったエレナ。
「貴方から見放されてしまった時はとても辛かったけど、私はすぐに忘れてしまう事なんて出来なかった。これからもそう…私の心にはいつもシルバがいて、忘れるにはとても大きすぎて、大切な存在すぎて。シルバから嫌われても私はきっとずっと忘れられない」
心の内を吐露するようなエレナの告白は俺に一声も上げさせることもできないほどの威力だった。
恐らく、エレナの瞳に映る俺はさぞ間抜けな顔をしていることだろう。
「私は何のとりえもなくて、何も持っていないけど…これからもずっと傍に置いて下さい」
そう言って、真っ赤な顔が近づく。
俺は最後まで何も言葉を発することなく近づく唇を受け入れた。

