白銀の女神 紅の王Ⅱ




「これでいいの?」


戸惑った瞳が訴える。

エレナが不安に思うように、婚儀は指輪の交換だけでは成立したと言えない。





「この先を知っているだろう?」


フッと笑ってそう言えば、エレナの顔が真っ赤に染まる。

婚儀の成立は各国様々だが、アークにも伝統的な儀式があった。

それは皆の前で行うには少し躊躇われるもので、事前に婚儀の流れを聞いていたエレナはそれを知っているからこそ顔を赤くしているのだろう。




「左手を」


そう言って自身の手をエレナの前に差し出す。

エレナは顔を赤くしたままおずおずと自分の手を置いた。

そして、その白く細長い手を持ち上げて、指輪に口づけを落とす。

次に額、眉間、両瞼と順に触れるだけの口づけをしていく。




婚儀の3日間身を清めた花嫁を自らのものとする意味で順に口づける、これがアークでの伝統的な習わしだった。

そして、最後に唇に口づけを落として終わり。

顔を離せば先ほどよりも顔を赤くしたエレナがいた。



その真っ赤な顔が初々しくてフッと笑う。

笑ったのが気に入らなかったのか、潤んだ瞳で頬を膨らませるエレナ。





「左手を置いて下さい」


言われるがままに自分よりも小さな手の上に自身の手を置く。

儀式は先ほど行った事を花嫁もすることで成立するのだ。