白銀の女神 紅の王Ⅱ




エレナの体から力が抜けたのを見計らい、胸に宛てていた手を取り払う。

焦るエレナを余所に胸元の赤い痕に視線を落とす。

透き通るような白磁のような肌に在るそれは目を引く。





「見ないで……お願い」


羞恥に染まるエレナの肌はほんのり赤く染まり、今にも泣きだしそうな表情をする。

もう隠すことを諦めたのか手には力が入っていなかったが、僅かに震えていた。




「隠さなくていい」


今エレナは何を考えているか想像に難くない。




“嫌われるかもしれない”


恐らくそう思っているのだろう事は少し怯えた瞳が物語っていた。




俺がエレナを嫌うなど、そんな事はあるはずがない。

俺が考えているのはどうお前を繋ぎとめておくかということだけだ。

ふと目を離したすきにするりと逃げだしてしまいそうなお前を繋ぎとめておくためなら何でもする。


婚儀もそのための一つ。

契りを結び、子供でも出来れば嫌でも俺に縛られることになると考えて。

自分勝手な考えに心の中で自嘲的な溜息を零す。



けれど、こればかりはどうしようもない。

エレナに対する想いはコントロールできず、持て余すくらいに大きい。

その根源となっているのは紛れもない愛おしさ。




一国の王が一人の女に入れ込んではならない。

端から見ればそれは国をも揺るがす弱点となりうる。

正妃の他に側室を作るのはそのためだ。