「それで?」
「え…?」
机の上に医療箱を置き、こちらを振り返ったシルバの言葉に思わず疑問の声を上げる。
「能力が戻ったから何だと言うんだ」
まさかそんなことを言われると思っていなかったため二の句が継げなかった。
多少なりとも驚くと思っていたのにシルバはいたって冷静。
ベッドの端に座ったまま何も言えないでいる私にシルバは言う。
「不安か?」と。
その問いにただ何も言わず頷いた。
するとシルバはベッドの傍まで来て私の手にそっと自身の手を重ねる。
「お前が不安に思う気持ちは分かる。その能力は人々の欲を駆り立て、煽り、混沌をもたらす。それ故、今回のように他国から狙われることもあるだろう」
私だってこの能力が周りに与える影響の大きさは分かっている。
自らが望まなくとも、ザイードのように自らの欲望の為に私を使役し、他国に混沌をもたらす可能性だってある。
ザイードでなくとも私を狙う者は現れるかもしれない。
けど、私が不安に思っているのはそんな事じゃないの。
私は私の能力を狙われるたびにシルバに迷惑がかかることが嫌だ。
シルバが私をかばってギルティス兵の剣の前に出た時、身を裂かれるような想いだった。
国王なのに一人でギルティスに乗り込んで、私の為に傷ついて。
またあんな状況になる可能性があることに不安を感じているのだ。
俯いたままシルバの大きな手を見つめていると―――
「離れるなよ」
一言そう言ったシルバの言葉に弾かれたように顔を上げた。
紅の瞳が私を見据える。

