バタンと閉まる後宮の扉。
ノックもなしに入ってきたため恐らくシルバが帰ってきたのだろうが、私は俯いたまま顔を上げられない。
ベッドに座ったまま膝の上に固く握った手を置いてシルバの足音に耳を傾ける。
近づいてくる足音は私のすぐ目の前で止まり、シルバの足が視界に入る。
大丈夫…胸の痕は隠せているはず。
シルバからは見えないわ……
このまま消えるまで隠していればいい。
ドクンドクンと不整脈のように鳴る心音を感じながらそんなことを考えていると、シルバがベッドに座る私の前で足を折った。
途端、視界にシルバが入り、下から見上げる紅の瞳にドキッと心臓が嫌な音を立てた。
「腕を」
「え?」
一瞬何を言われたか分からず、シルバを食い入るように見つめる。
しかしシルバは気にするでもなくもう一度口を開く。
「腕を見せろ」
「あっ…はい……」
相変わらず表情が硬く、声が低い。
言われるがままに右腕を差し出せば、シルバがそっと私の腕に手を添えた。
見ればシルバの横には木箱があった。
その木箱の中には、包帯や綿、小瓶などが入っている。
シルバは迷いなく小瓶と布を取り、片手で小瓶に入った液体を布に含ませる。

