「ここで待ってろ」
「え?あ…まっ……」
手が離れたかと思うとシルバはそう言って後宮を出て行った。
『待って』と言う暇さえ与えてくれなかった。
ドクン…ドクン…と鳴る心臓。
チラリと見たシルバの表情は硬くて、どこか怒っているようにも見えた。
なんで怒ってるの…?
私が原因?
自問自答しながらふらふらとした足取りで歩いて行き、ベッドに座った。
緩みかけたローブの結び目に手をやってほどく。
そしてローブを脱ぎ、視線を下に持って行った瞬間息を飲んだ。
じっと見つめるのは胸の上にある小さな痕。
薄くて見落としてしまいそうなその痕はうっすらと赤く主張していた。
それは紛れもなくキスマークと呼ばれるもの。
「そんな…あのときの……」
ザイードかそれとも地下牢の男たちか。
どちらにせよこれは紛れもないキスマークだった。
もしかしてシルバはこれを見たのかもしれない。
じわじわと襲う不安がピークに達した時、再び後宮の扉が開く。
咄嗟に服をずらし、胸のキスマークを隠した。

