アーク王宮――――
月明かりが照らす長い廊下をスタスタと歩く二つの足音。
私の手を引いて前を歩くシルバ。
怪我をしているのにシルバの足取りは早く、ついていくのはやっとだった。
ギルティスから無事アークへ帰還したはいいものの、シルバは終始無言。
大きな背に何度か声をかけようと試みるも、雰囲気に飲み込まれて開きかけた口を閉ざす。
城の中には衛兵や侍女はいるが、ほとんどの兵士たちはまだギルティスへ留まっている。
私たちが無事にアークまで戻ったのを見計らって捕虜を返すと言うウィルの考えだ。
そのため、城内はやけに静かだった。
前を歩くシルバがどんな表情をしているのかは分からず、緊張は高まるばかり。
シルバの怪我が気になるのになかなか声をかけられない。
シルバは歩きながら器用にマントを取り、腰に下げていた剣を向こうから歩いてきた使用人に手渡す。
過ぎ行く使用人たちは皆頭を下げて私たちを見送る。
そして、行き着いた先は二人だけの部屋。
キィー…と扉を開け、後宮に入れば変わらぬ光景がそこに有った。
ギルティスにいた期間はたったの3日間だったのに、それがとても長い期間のように感じて、後宮がとても懐かしく思えた。
やっぱりここが私の帰る場所なのだ。
そう思ってほっと安堵していればシルバの手がスッと離される。

