「行け」
「言われなくとも」
ザイードの悔しそうな顔を無視して指を口に咥える。
そしてピー…と長い口笛を吹いた。
するとつり橋の向こうの森から見事な黒馬が現れ、こちらに駆けてくる。
勢いよく駆けてきたその馬は俺たちの前で高々と前足を浮かせ、止まった。
その体躯は大きく、国王の馬として選ばれた血統書つきの見事な黒馬。
俺の愛馬を前にエレナはやっと笑顔を見せて、馬の頭にすり寄る。
不思議なことに、普段荒々しい俺の馬がエレナの前では大人しくなる。
触られることを嫌がりもせずただ受け入れるのだ。
主に似るとはこういうことかもしれない。
エレナを先に馬に乗せ、自らも馬上に乗る。
下から俺たちを見上げるザイードとフォレスト。
「次に顔を合わせる時は覚悟しておくんだな」
「それはこちらの台詞だ。俺からエレナを奪うと言うならギルティスごと潰す」
安い啖呵をひと蹴りしてエレナを引き寄せる。
「我が妃が世話になったな」
フッと笑ってそう言い残し、ギルティス城を出て行った。

