白銀の女神 紅の王Ⅱ




「行け」

「言われなくとも」



ザイードの悔しそうな顔を無視して指を口に咥える。

そしてピー…と長い口笛を吹いた。

するとつり橋の向こうの森から見事な黒馬が現れ、こちらに駆けてくる。

勢いよく駆けてきたその馬は俺たちの前で高々と前足を浮かせ、止まった。



その体躯は大きく、国王の馬として選ばれた血統書つきの見事な黒馬。

俺の愛馬を前にエレナはやっと笑顔を見せて、馬の頭にすり寄る。

不思議なことに、普段荒々しい俺の馬がエレナの前では大人しくなる。

触られることを嫌がりもせずただ受け入れるのだ。

主に似るとはこういうことかもしれない。




エレナを先に馬に乗せ、自らも馬上に乗る。

下から俺たちを見上げるザイードとフォレスト。




「次に顔を合わせる時は覚悟しておくんだな」

「それはこちらの台詞だ。俺からエレナを奪うと言うならギルティスごと潰す」


安い啖呵をひと蹴りしてエレナを引き寄せる。





「我が妃が世話になったな」


フッと笑ってそう言い残し、ギルティス城を出て行った。