「やめておけ。俺が戻らなければ人質にとった兵士の命の保証はないぞ」
「ザイード様、これは演技です。どうせ嘘に決まっています」
それまで黙っていたフォレストが必死にザイードに訴える。
「嘘だと思うのならかかってくればいい。ただし、その時はアークに遣った兵士も戻らないと思え」
そう言えば、引きつった笑いも消え、苦虫をつぶしたような顔をするザイード。
悔しそうな表情を見る限り兵力は惜しい様子。
それもそのはず、兵力こそ全てのギルティスでは兵士を奪われれば国の衰退につながる。
そうすればギルティスに恨みのある各国が押し寄せるだろう。
ザイードもそれが分かっているからこそ俺たちを囲む兵士たちを踏みとどまらせていたのだ。
「お前としても今兵士を失いたくはないだろう」
それがとどめの一言だった。
ザイードはチッと悪態をつき、兵士に向かって手をかざし構えていた剣を降ろさせる。
するとやっと緊張が解け安堵したのか、腕の中のエレナの体から力が抜けた。
その様子を見ていたザイードが俺に向かって口を開く。
「その女のために何故ここまでする。単独で乗り込んでくるとは正気の沙汰ではないな」
「言っただろう、こいつにはそれだけの価値があると。言っておくが能力は関係ない。エレナの代わりなどいないからだ」
真正面からザイードを見据えて言い放つ。
ザイードは一瞬目を見開き、睨むように俺を見据えた。
そして俺たちの前に立ちはだかっていたギルティス兵を下がらせる。
外へとつながるつり橋への道が開いた。

