「女は愛しむ為にある。無能なお前と一緒にするな」
手を引き頭に口づけを落とせば、たちまち赤くなるエレナの頬。
フッと笑えば、やっとエレナの体から緊張が解けた。
その様子を見ていたザイードは冷ややかに口を開く。
「口のきき方には気を付けるんだな、アークの王よ。お前は今敵国の地にいることを忘れたか」
「まさか」
「ならば逃げれぬことなど分かっていように。何が守るだ」
ザイードは腹を抱えて笑う。
それこそ間抜けな男を嘲笑うように声を上げて。
だがその光景こそ嘲笑の対象でしかない。
「お前は何故俺が単独でこの城に潜入したか分かるか?」
問いかけにザイードから笑みが消え、訝しげな表情をした。
「単独で潜入する方が身軽に動けるためだ。そしてもう一つ。お前たちを油断させるためでもあった」
「油断?」
そんなことを思ってもみなかったのだろう、ザイードは間抜け面で俺の言葉を繰り返す。

