分かってくれたのだろうか。
俺にとってはエレナを、エレナにとっては俺が欠けることをどんなに恐れているか。
お互いがかけがえのない存在だから守りたいという想いは同じ。
だからこそ自分を犠牲にして相手を守って生き延びても、そこに幸せなど存在しない。
ギュッとエレナの手を握る。
この小さな手が俺の手を取る限り、必ず守る。
これはあの時エレナの背に傷をつけてしまったあの日からの揺るぎない誓いだ。
「エレナ」
地を這う様な低い声でエレナを呼ぶザイード。
その声にエレナの顔に緊張が走り一度目を瞑ったものの、俺の手を取ったままザイードを振り返る。
「私はここには残れません」
ザイードに向かってはっきりとそう告げるエレナ。
「貴方がシルバを殺めるというのなら、私も同じ道をたどるものと思ってください。ギルティスの地に、ましてやシルバのいない世界にいる意味などないのだから」
エレナの言葉にこみ上げたのは紛れもない喜びだった。
ザイードに諦めさせる為に大袈裟に言っているだけだと言うことは分かっている。
しかし、エレナも俺と同じ想いを持ってくれていたことが素直に嬉しかったのだ。
「それで本当にいいのだな、エレナ。その男はお前の能力が目当てで優しくしているだけだぞ」
「俺はエレナを国の道具にするために傍に置いているわけじゃない」
エレナの表情は見えないが、少し顔が俯き、心の内で葛藤しているのが分かった。
ただでさえこの数日間牢屋に囚われ憔悴しきったエレナをこれ以上不安にさせたくない。

