白銀の女神 紅の王Ⅱ




「こちらへ来い」


数メートル先から手を差し出すザイード。




「来なければその男がどうなるか分かっているだろうな。アークの王と言えど一人でこの数を相手に出来るとは思うまい」


ギュッと俺の服を握る手が強まる。

喉の奥を詰まらせ、何も言わずにザイードを見つめるエレナ。

何も言葉を発しないが、心の中では激しい葛藤が渦巻いているようだった。





「分かり…ました……」


そう言ってザイードから視線を外し、項垂れる。

離さないとばかりに強く握りしめていた俺の服から手を離し、そっと一歩を踏み出すエレナ。

俺の方を振り返りもせずにザイードのもとへ行こうとするその背に苛立ちが増す。





パシッ…―――――


二歩目を踏み出すよりも先にエレナの手を取り、引き戻した。

振り返ったエレナの表情は辛そうに歪んでいた。

涙に濡れる瞳を真っ直ぐ見ながら告げる。






「もう離れることは許さない」


この言葉にエレナは一瞬目を見張るが、たちまち瞳いっぱいに涙が浮かぶ。




「ッ…でも…シルバが……」


先ほどまで苛立っていたはずだが、声を詰まらせて答えるエレナを責められようか。

否、責められるはずがない。