この男を見ていると苛立ちが沸く。
それは、じろりと舐めまわすような視線がうっとおしいわけでも、敵国の国王だからでもない。
理由はただ一つ、エレナが怯えているのだ。
ピタリと体を寄せたまま離れようとしないのは、ザイードが現れたせいだろう。
その証拠にザイードの方を一度も振り返らない。
「お前がアークの国王だったのか。自ら単身で敵国に乗り込むとは一国の王が聞いて呆れるな」
「エレナを取り戻すには俺が動くだけの価値があっただけのことだ」
馬鹿にした言葉に思ったままの事を答えれば、ザイードは腹を抱えて笑い出す。
「ククッ…そんな女にか?能力を失った女に何の用がある」
やはりザイードはエレナの能力の事を知っていた。
「女などこの国に吐き捨てるほどいるだろ。その中から選べばいい」
「生憎だが俺はエレナだけでいい」
ピクリと眉を動かし答えた俺の言葉が意外だったのかザイードは驚いたような表情をする。
「その女をこちらに渡せばアークに向かわせた兵を帰す。どうだ、いい条件だろう?」
「それだけか?」
今度はシルバがフッと獰猛な笑みを浮かべて挑発する。
これにはプライドの高いザイードが黙っているはずもなく…
「エレナッ!」
大きく呼ばれた名に腕の中のエレナがビクッと肩を揺らし、恐る恐る振り返る。

