白銀の女神 紅の王Ⅱ




この男を見ていると苛立ちが沸く。

それは、じろりと舐めまわすような視線がうっとおしいわけでも、敵国の国王だからでもない。



理由はただ一つ、エレナが怯えているのだ。

ピタリと体を寄せたまま離れようとしないのは、ザイードが現れたせいだろう。

その証拠にザイードの方を一度も振り返らない。




「お前がアークの国王だったのか。自ら単身で敵国に乗り込むとは一国の王が聞いて呆れるな」

「エレナを取り戻すには俺が動くだけの価値があっただけのことだ」


馬鹿にした言葉に思ったままの事を答えれば、ザイードは腹を抱えて笑い出す。




「ククッ…そんな女にか?能力を失った女に何の用がある」


やはりザイードはエレナの能力の事を知っていた。




「女などこの国に吐き捨てるほどいるだろ。その中から選べばいい」

「生憎だが俺はエレナだけでいい」


ピクリと眉を動かし答えた俺の言葉が意外だったのかザイードは驚いたような表情をする。




「その女をこちらに渡せばアークに向かわせた兵を帰す。どうだ、いい条件だろう?」

「それだけか?」


今度はシルバがフッと獰猛な笑みを浮かべて挑発する。

これにはプライドの高いザイードが黙っているはずもなく…





「エレナッ!」


大きく呼ばれた名に腕の中のエレナがビクッと肩を揺らし、恐る恐る振り返る。