「これはこれは、どこにいこうとしているのかな」
愉しそうな男の声にエレナの表情が一瞬にして変わる。
体は硬直させたまま男の方を向かないエレナ。
武装した部下を数十名連れてこちらにゆっくり歩いてくる男。
間違いないこいつがギルティスの国王か……
名を確かザイードと言ったな。
「どこから子鼠が入ったやら。そこのアーク兵、その女はもう私のものです。こちらに渡しなさい」
ザイードは目の前の男が敵国の国王だとは思っていないらしい。
「一人でこの城に侵入したその勇気に免じて女を渡せば見逃してやろう」
「断る」
にべもなくきっぱりと告げ、渡すつもりはないと言う意思を込めてエレナを抱き寄せた。
真正面から着き返した言葉にそれまで笑みを湛えていたザイードの表情が曇る。
明らかに気分を害した様子のザイードが口を開こうとした時。
「ザイード様!」
ハァハァと息を切らしながら走ってくる中年の男に目を見開く。
エレナの口からロメオの名が出た時からまさかとは思ったが、そう言う事か。
「こちらの国に来ても相変わらずのようだな、フォレスト」
フッと口角を上げ笑うと、フォレストは悔しそうな表情をして口を開く。
「こ、こやつはアークの国王“シルバ・アルスター”であります!」
「何!?」
八つ当たりとばかりにフォレストが告げた言葉に驚愕し、改めて俺を見るザイード。
足のつま先から頭のてっぺんまで視線を這わせるザイードを睨みつけるようにして見据える。

