数センチ扉を開け、廊下の様子を見るシルバ。
その大きな背をまだどこか夢見心地で見る。
デュークが言った事が嘘で本当に良かった。
けれど何故シルバは一人で来たのだろう。
たった一人で、しかも私を連れて敵国の城から逃げられるのだろうか…
不安でシルバの手をキュッと握り返す。
するとシルバは振り返り、私の不安げな表情を見てフッと微笑む。
手を引き私の腰を引き寄せ、顔が近づいたかと思えば触れるだけの口づけが降ってきた。
「大丈夫だ」
ドキッ…――――
唇が離され滅多に見られないシルバの笑みを前にして胸が高鳴る。
「必ず帰れる」
シルバは気づいていたのだろう、私の手がまだ震えていた事に。
けれどその言葉と温かな手に包まれればだんだんと落ち付いてくる。
そして、シルバは私が頷いたのを確認して部屋を出た。
音もなく扉を開け、すばやく廊下に滑り出て直線の廊下を一気に走る。
シルバには先ほど渡した地図がもう頭の中に入っているのか、分かれ道に来ても迷いなく道を選んでいく。
ハァ、ハァ…とだんだんと息が上がる。
2つ目の角を曲がろうかというところでシルバが突然立ち止まった。
なに?と言う間もなく口を塞がれ、耳元で静かに…と囁かれる。
一瞬にして息遣いさえ消え、意識は自然とシルバの見つめる先に向けられた。

