白銀の女神 紅の王Ⅱ




「あまり大きな声を出すな。ギルティス兵に気付かれるだろ」


そう言って、私の耳元で囁く声にまさかと思う。

パチンと音を立てて部屋の灯りがつき、私を部屋に連れ込んだ男の顔が露わになる。



そして、息を飲んだ。





「シル…バ…」


瞬きも忘れた瞳からポロッと涙が零れ落ちるとともに、ポツリと呟いた。

だって、目の前にはいるはずのない人がいたから。

闇に溶けそうなほどの漆黒の髪に燃える様な紅の瞳。





「エレナ、遅くなってすまなかった」


私が動揺しているのも知らないでその人、シルバは話し始める。

久しぶりに呼ばれた名前にトクンと胸が熱くなる。




「国境越えはすんなりいったが、この城に入り込むのに時間がかかった。しかし、何故お前がこんなところにいるんだ。俺の迎えが待てなかっ…」




ギュッ…―――――

続く言葉は私がシルバの胸に飛び込んだことで途切れた。




「ッ…エレナ?」


シルバは私の行動に驚きつつもしっかりと受け止めてくれた。

そして抱きついたきり何も言わず涙を流す私をそっと包み込んだ。




「本当にすまなかった」


震える私の肩を抱き込み、ギュッと強く抱きしめるシルバ。

私の体に回る腕と優しい声が夢のようだった。