「あまり大きな声を出すな。ギルティス兵に気付かれるだろ」
そう言って、私の耳元で囁く声にまさかと思う。
パチンと音を立てて部屋の灯りがつき、私を部屋に連れ込んだ男の顔が露わになる。
そして、息を飲んだ。
「シル…バ…」
瞬きも忘れた瞳からポロッと涙が零れ落ちるとともに、ポツリと呟いた。
だって、目の前にはいるはずのない人がいたから。
闇に溶けそうなほどの漆黒の髪に燃える様な紅の瞳。
「エレナ、遅くなってすまなかった」
私が動揺しているのも知らないでその人、シルバは話し始める。
久しぶりに呼ばれた名前にトクンと胸が熱くなる。
「国境越えはすんなりいったが、この城に入り込むのに時間がかかった。しかし、何故お前がこんなところにいるんだ。俺の迎えが待てなかっ…」
ギュッ…―――――
続く言葉は私がシルバの胸に飛び込んだことで途切れた。
「ッ…エレナ?」
シルバは私の行動に驚きつつもしっかりと受け止めてくれた。
そして抱きついたきり何も言わず涙を流す私をそっと包み込んだ。
「本当にすまなかった」
震える私の肩を抱き込み、ギュッと強く抱きしめるシルバ。
私の体に回る腕と優しい声が夢のようだった。

