「ロメオさん……」
目の前にいたのはフォレスト伯爵の息子ロメオだった。
手には太い木の棒が握られ、肩で呼吸していた。
私の小さな呟きに僅かに笑顔を見せ、木の棒を脇に放り投げる。
カランカランッ…―――
静かになった牢屋に乾いた木の棒が転がる音が響く。
ロメオは私の上に伸し掛かっている男に手をかけ、歯を食いしばりながら男の体を押した。
「クッ……」
見るからに貧弱そうなロメオが小さく声を上げながら、ありったけの力を込める。
すると遂にグルっと男の体が回り、私の上から男が退いた。
苦しかった呼吸が楽になり、肺一杯に酸素を入れる。
「大丈夫ですか?」
ゴホッゴホッ…と息を詰まらせていると、そっと差し出された手。
余りにも驚いて、差し出された手とロメオの顔を交互に見る。
驚いたと言うよりは戸惑った。
てっきりロメオもあの男たちに変わって私を襲うのだと思っていたから。
だからこそ、何か裏があるのではないかと疑い、差し出された手を取れない。
するとロメオは眉尻を下げながら差し出した手を引いた。
私はベッドから起き上がり、牢屋の入り口に立つロメオからじりじりと後ずさった。
息は上がり、カタカタと手が震える。
「怖い想いをしましたね」
今にも泣き出しそうな私にそっと声をかけるロメオは私を安心させるためか、それ以上は近づいてこない。

