「何だ」
縛った私の両腕を抑えたまま、扉の向こうへ声をかけるザイード。
その声があからさまに低かったからか、ベロニカは咄嗟に「申し訳ございません」と返す。
「アークの兵が国境内に入り込んだとの知らせが入りました」
ッ……アークの兵がギルティスに?
「我が国の兵も応戦しており、今は何とか国境付近で押さえておりますが、兵が足りません」
「ならば兵を送ればいいだけのことだろう」
ベロニカの報告に対して淡々と述べるザイード。
「おっしゃる通りです。しかし、敵国はあのアーク。兵士の士気を上げるためにも出立前にザイード様のお言葉を…」
すがる様なベロニカの声にザイードはチッと悪態をつき、ベッドから降りる。
拘束から解放されるや否や服を整える。
「今日のところは助かったな。だが次はないと思え」
ザイードが扉を開けば、俯いて諦めかけていたベロニカがバッと顔を上げ、嬉々とした表情をする。
「こいつを地下牢へ戻しておけ」
「はい!」
ベロニカは笑顔で答え、ザイードは部屋を出て行った。

