白銀の女神 紅の王Ⅱ




でも、シルバは私がここに残ると言ったら何て言うだろう。

少しでも引き止めてくれるかな。




部屋中の兵士が騒いでいる中、そんなことを考えていると…






『エレナ様』


小さな声で私の名を呼ぶ声がした。

フッと視線を上げると、そこには先ほどザイードに報告をしていた兵士。

こちらに歩いてきながら視線は私の方を向いている。

空耳だろうかと思ったが兵士は何かを訴える様にじっとこちらを見つめている。

そして、握りしめた右手を私に差し出すように動かし、あと数歩で触れるほどの距離に近づいた時。





ガッ…――――


「オイお前。アークの王はどこにいる」


浮かれたギルティス兵の一人に肩を掴まれた兵士。

何か訴える様な視線で私をちらちらと見ていたが、「こっちだ」と言って私の横をスッと通り過ぎる。





今のは何だったのだろう…


私の横を素通りした男の背を見送りながら考える。

あれはやはり空耳だったのだろうか。

あの兵士から私の名を呼ばれた気がしたけど…






「ニーナ、さっき私を呼ぶ声が聞こえなかった?」


後ろに控えていたニーナにそう聞けば、不思議そうな顔をして首を横に振った。

もしかしたらまた無意識のうちに人の心を読んでいたのかもしれない。

だとしてもこの場には私を敬称をつけて呼ぶ人はいないだろうし…

益々頭を抱えて考えていると、ギィっと扉が開き、先ほど出て行った兵士たちが戻ってきた。