「目の前でお前を奪われ、悔しがる様をとくと拝見しようじゃないか」
ッ…やっぱり……
ザイードはシルバに“私”を帰すと告げてここへ呼び出し。
私の口からここに残ると言わせようとしているのだ。
「ベロニカ、国境付近の兵士に使いを出させろ」
「はい、ザイード様」
ベロニカは厳しい表情から一転して嬉しそうに答える。
走っていくその横顔は少し赤かった。
一方の私はそれどころではなかった。
シルバは私がここに残ると言ったら何て言うだろう。
私が裏切ったと思うのかな…
そう思うと心は重く沈んだ。
「せめて最後はしっかりと別れを告げるんだな」
フッと笑ったザイードを恨まずにはいられなかった。
愛する人に別れを告げるも同じ言葉を言わなければならない。
ズキズキと鈍い痛みが胸を襲う。
シルバに別れを告げる覚悟が出来ないままその日は過ぎて行った。

