砂塵が舞い荒廃した土地。
人の気配がない村。
外壁が剥がれ廃れた家。
ここはアーク王国・イースト地区。
内乱に決着をつけ、やっと修復と統治を始めたのが数か月前のこと。
まだ手を付けたばかりのその土地は、未だ内乱の爪痕を残していた。
ここに来るのはあの視察以来の事か…
イースト地区中心街を走りながら流れる光景を見れば、時が経つにつれ少しずつ復旧が進んでいることが分かる。
塗装中の建物や人々の影、ぽつぽつとだが商いを行っているところもあった。
馬を走らせながらその光景を見ていれば、後ろからやや苛立ちを含んだ声で「シルバ」と呼ばれる。
仕方なく馬を止めて振り返れば、城からついてきたデュークが呆れた顔をしていた。
「やっと止まったか…ったくお前はエレナの事になると何でそう周りが見えなくなるんだ」
これでもまだ冷静なつもりだが、長年の付き合いのデュークにはそう見えるらしい。
「兵をまとめる前に一人で城を出るわ、婚儀に来た客人に何の知らせもないわ、もう少し自分の立場を考えろ」
「兵は後からで構わない。客人への説明はウィルが上手くやってるだろ」
城の敷地内に侵入され、この国の王妃になろうかと言う花嫁が攫われたと言う事実が国民に知れ渡ったらどうなるか。
数か月前、内乱が起きたばかりのこの国に不安が広がることは必至だろう。
しかも事の主犯がギルティスだと知れば尚更動揺する。
表情も変えずにただ淡々と答えた俺に、呆れた顔をするデューク。
「しかし…ここまで来たはいいものの、これからどうするんだ?あの場に居合わせた兵しか連れてこなかったぞ。国境にも最低限の兵士しか置いていないし…」
デュークは難しい顔をしてブツブツと独り言を呟く。

