白銀の女神 紅の王Ⅱ




はじめこそ自分が無視されたことにカッとなっていたデュークだが、東の森に着いた時にはその威勢もなくなっていた。





「これは…」


デュークがポツリと口にする。

禊が執り行われているはずの泉には兵士たちが群がり、在るべき者の姿はなかった。



代わりにそこに有ったのは、荒らされた痕跡。

禊のために持ってこられた籠が無残にも踏みつけられ、中に入っていたタオルが地面に落ちていた。





「ッ……」



ダンッ―――――

やり場のない怒りを壁にぶつける。





「何があったんだ?エレナは…」


一目見て“何か”あったであろうこの場を見て、デュークは言葉を無くす。




「エレナが攫われた」

「何だとッ!?何故だ」



声を張り上げるデュークを無視してあるものを拾う。

それはいつもエレナが被っているベール。

白銀の髪が皆の目に触れるのを嫌がって被っているものだった。



エレナを攫ったのは何故だと?

知っていればこんな場所に来ずに取り戻しに行っている。




「シルバ様…」


おずおずと近寄る家臣が怯えを滲ませた顔つきでやってくる。

エレナを攫われたと言う失態を咎められるのではないかと内心焦っているのだろう。