シルバ…けてっ…―――
「ッ……!」
僅かな水音をたてハッと目を見開く。
しかし、そこには変わらぬ風景。
石造りの泉とそれを囲うようにして広がる森の中。
禊の儀式をするために来た時と変わらぬ光景があったのだが…
「どうしたんです?」
階段の上から声をかけられる。
振り返れば訝しげな表情をしたウィルがこちらの様子を窺っている。
「エレナの声が聞こえた」
思ったままの事を口にすれば、キョトンとしたウィルの表情。
パチパチとまるで女のように丸い瞳が数回瞬きしたかと思うと、次の瞬間にはクスクスと笑い…
「エレナさんがここにいるはずがないじゃないですか」
何を言っているのです…と言うウィルに不機嫌に眉を寄せる。
「空耳ですよきっと」
尚もクスクスと笑うウィルにフンッと顔を逸らし、背を向けた。
エレナがここにいるはずがないことは俺だって分かっている。
この時間エレナは反対側の森の泉で禊をしているはずだ。
だが、エレナの声が聞こえた気がした。
否、ウィルの言う通り気のせいかもしれない。
もうエレナに触れなくなって3日になる。
当然、昨日カーテン越しに抱きしめたことなど数に入らない。

